9月は何かと豊作続きだけれどもNo.1候補のアルバムが出た。
HEARTのメンバー、Nancy Wilson率いるバンドROADCASE ROYALEのデビューアルバム「First Things First」だ。
HEARTよりもブルースロック寄りでソウルフルでグルーヴィーなこのバンドのメンバーや経緯、そしてアルバムの魅力を書き連ねていくぜ、と。
目次
ROADCASE ROYALEのメンバー
ギター&ボーカルのNancy Wilsonだけでなく、ベースのDan Rothchild、ドラムのBen Smith、キーボードのChris JoynerがHEARTのメンバーだ。ほとんどHEARTじゃないか、という疑問への回答はもう少し後で触れる。
そしてリードボーカルのLiv Warfield。
彼女は「ポートランドで最もソウルフルな歌手」という詳細よくわからない称号を持つソロシンガーでアルバムをこれまで2枚出している。
彼女のキャリアで何より輝かしいのは故PrinceのバックバンドTHE NEW POWER GENERATIONでの活躍、そこで得た信頼からPrinceのプロデュースによって2ndアルバムを出したことだろう。HEARTのリードボーカルAnn Wilsonとは違ったソウルテイストのロックボーカルがこのバンドの特徴になっている。
そしてリードギターのRyan Waters。
彼はSadeのバンドギタリストとして長らく活躍し、また前述したLivの2ndアルバムの共作者でもある。
Sadeのようなジャジーなギターから、ブルースハードロックなギターまで多彩なサウンドでバンドを引っ張っている。この人もまたこの新バンドをHEARTとは違うものに仕立てている立役者。
HEARTのギターCraig Bartockはどうしたんだろうね。ま、いいか。
HEARTとNancy Wilson
メンバー紹介してくれたのはいいんだけど、そもそもHEARTってなんだよという方の為にHEARTとNancy Wilsonの話もしておこう。
HEARTはAnnとNancy Wilson姉妹を中心としたハードロックバンドで、70年代から現在まで活躍している大御所だ。デビュー当初はLED ZEPPLINフォロワー丸出しのスタイルだったけども80年代に潔く売れ線ハードロックを取り入れ見事大成功、1985年のアルバム「HEART」、1987年の「Bad Animals」でヒット曲を多く生み出し、女性ハードロックバンド第一人者の地位を確立した。
姉Ann Wilsonは、LOVERBOYのリードボーカルMike Renoとデュエットした1984年の映画「Footloose」のサントラ曲 “Almost Paradise” でも大ヒットを残している。
HEARTについて語りたいことはまだまだあるけども、とりあえずこんなもんでしょうかね。
Nancyは「あの頃ペニー・レインと」(2000)、「バニラ・スカイ」(2001)などで知られる映画監督キャメロン・クロウと結婚していて、2人の子供を産んでいる。
既に離婚してしまった二人だけれども結婚していた当時は、夫が監督、妻がその映画音楽を担当するといったタッグ制作もしていた。
Wilson姉妹に起きたトラブル
HEARTがありながらなぜこのバンドが生まれたのか。それはある事件に端を発する。
2016年8月、HEARTのツアー中にAnnの夫がNancyの双子の子供に暴行する事件が起きた。夫DeanはWilson姉妹とは30年来の知り合いで、甥っ子たちも可愛がっていただろうにこうした事件が起きてしまったことは非常に悲しい。この事件がキッカケでHEARTの活動は止まってしまった。
そして2017年の今もHEARTからの音沙汰はなく、音楽ニュースにはAnnのソロ活動、Nancyのこの新バンドの情報が届くのみだ。
「First Thing First」の見どころ
1曲目 Get Loud
リードトラックの「Get Loud」はこのバンドのスタイルをそのまま語っていると言える。
ロックだけどもグルーヴィー、白人的で黒人的な何とも珍しい曲だと思う。
HEARTが少しアコースティックになったと感じる人もいれば、ロック寄りのアシッドジャズと感じる人もいるだろう。SadeはさすがにやらなそうだけどもIndia ArieやJoss Stoneだったらやるかもしれないロック曲。
2曲目 Not Giving Up
1曲目はだいぶオシャレ要素が強かったが、このバンドは骨太にブルースロックな一面も持ち合わせている。
ゴリっとロックに入って来たイントロとは対象的にR&BテイストなAメロに驚くが、これがこのバンドのスタイル。
5曲目 Cover Each Other
サビのハーモニーが美しスローテンポなロック曲。バンドはロックアプローチだけれどもコーラスの入れ方はR&B的だったりしてここでもこのバンドの異質感が感じられる。デカい会場のライブで聴きたい曲。
8曲目 These Dreams
HEARTの大ヒット曲の自己カバー。原曲でもリードボーカルはNancyだったので違和感は一切なし。キーは原曲よりも下がっている。
バンドのアプローチはオーセンティックで大人なポップロック。この曲を提供したMartin PageがAORミュージシャンたちを集めてカバーしたらこんな感じになりそう。サビのコーラスはさすがのハーモニー。張り上げることなく女声2人男声1人の三声がキレイに響いている。CメロではLivがリードを歌う。この切り替わりがまた気持ちいい。
このライブ盤は練習不足感があるね・・・
9曲目 Mind Your Business (Live)
ライブ演奏の収録。こちらは打って変わってソウルロック。
エレキピアノがボトムを支え、そこにロックギター、そして厚く深いコーラスが乗る。
HEARTじゃ到底やらなかっただろう曲、がゆえにこのバンドの魅力と言える。Livのボーカルが生き生きとしている。
収録曲
- Get Loud
- Not Giving Up
- Hold On To My Hand
- Even It Up
- Cover Each Other
- The Dragon
- Insaniac
- These Dreams
- Mind Your Business (Live)
- Never Say Die
最後に
このバンドは幅広く色々な曲を魅力的にやれる懐の深さがある。
地道にアルバムを出し続けてほしい気持ちでいっぱいなのです。
その一方でHEARTの活動再開も祈ってやまないのです。